収益を目的に漫画をYouTubeに持っていくことの愚かさ
明けましておめでとうございます。本年もいつまで続くかわからないブログですが、よろしくお願いいたします。新年早々で申し訳ないですが、ネタは批判ネタです。
Twitterで流れてきたのを見て、驚いてしまった。嘘でしょと。
さっそくだが批判したい。
実際のYouTube漫画
その1 時間の問題
漫画の時間軸というのは、読者に委ねられている。紙だろうと電子だろうとそこは不変だった。動画化することでそこに多少の調整はできるにしても強制される時間軸が生まれる。
それを前提として作られた作品なら問題ないが、全く意図していない作品に強制的な時間の流れを付与するのは蛮行だとしか思えない。
その2 縦か横か
漫画のページは基本は縦画面だが、動画の書き出しを横動画で行なっている。YouTubeはすでに縦動画にも対応している。読みやすさを考えれば、見開きを完全に捨てて縦動画にした方が見やすい。YouTubeに対する研究が足りないのではないか。
その3 収益化審査
YouTubeの収益化審査に通るとも思えない。最近のYouTubeの審査は投稿者の存在が感じられるものを優先しているらしい。実際の声とか姿とか。そういうのがないのは審査が通りにくいと聞く。機械音声とかはアウトらしい。もし1000人登録者が超えたら自動で審査が通ると思っているならば現状認識が足りない。
ただし審査が通ったならば1巻平均40分動画になるので広告を入れまくれる尺になるので収益率はそこそこ高めになると思われる。ただ広告を入れまくったYouTube漫画の読者体験がどうかは想像にお任せしたい。
その4 公式か海賊か
違法アップな存在しかなかったYouTube漫画に、公式で手を出すところが出ると、「公式だと勘違いしてました」的な鑑賞者を生む。海賊版を駆逐するだけのパワーがないなら、状況を混乱させるだけの迷惑な存在になりかねない。
その5 翻訳の信頼性
セリフを自動翻訳に委ねるようだが、その翻訳が漫画本来のニュアンスを表現できているかどうかは作家の信頼のおける人間がチェックできる体制ではない。それなのに公式的な扱いになってしまうのは問題ではないだろうか。海外の人に対してクオリティの担保ができていないことにならないか。日本の漫画作品に対する海外の人々からの信頼を失う結果にならないだろうか。
その6 目的が収益の増加
このプロジェクトの目的は金でしかなく、金のために漫画本来のフォーマットを大幅に改竄してしまっている。しかもその発想がどこぞのIT屋ではなく、名のある漫画家本人によるものというところに絶望する。むしろIT屋の発案であって欲しかった。
その他雑感
今日の内容は、YouTubeにおける漫画表現の可能性まで批判するものではない。時間軸がある漫画表現というのも突き詰めていけば、なんらかしらの完成形があるのかもしれない。それはそれで良いとしてだ。
マンガ図書館Zにアップされている漫画は紙媒体を前提に書かれている作品しか存在しないだろう。古い作品ばかりなので。それを収益のさらなる増加の為とはいえ、大幅なフォーマットチェンジをするというのはどうなのか。もちろん勝手にやるわけではなくて、作者自身がOK出さないとダメなわけだけれども。
どうも赤松先生の運営に関する焦りみたいなのが見えてしまって、どうもよろしくないと思う。もともと先生は「漫画版YouTubeを」とは発言していたけれども、それをそのまんま実行してどうすんねん!?という感じである。